宮島の名門・やまだ屋が仕掛ける「もみじ饅頭」の静かな革命。2026年、伝統と持続可能性が交差する現場を歩く
広島 やまだ 屋は、宮島を代表する老舗として、昭和初期の創業以来、もみじ饅頭の歴史を紡ぎ続けてきた。観光客の波が完全に戻った2026年の今、この名門が単なる「定番のお土産」という枠組みを超え、新たな挑戦に乗り出している。
宮島の厳かな空気の中で育まれた伝統の味を守りつつ、時代の変化に寄り添う広島 やまだ 屋の姿勢は、地元住民だけでなく世界中から訪れる旅行者をも魅了し続けている。特に近年注目を集めるサステナビリティへの取り組みは、和菓子業界全体に新しい風を吹き込んでいる。
伝統の「もみじ饅頭」と、もちもち食感で覇権を握る「桐葉菓」の二枚看板

やまだ屋の看板と言えば、誰もが思い浮かべるのが「もみじ饅頭」だ。しかし、地元広島の人間やリピーターたちの間で、それと同等、あるいはそれ以上の熱量で支持されているのが「桐葉菓(とうようか)」である。もち粉を使った独特の生地は、一口かじると驚くほどもちもちとしており、中の上品な餡とのバランスが絶妙だ。
この二つの主力商品は、単なるお菓子のバリエーションではない。伝統的なカステラ生地の技術と、新しい食感へのあくなき探求心という、同社の二面性を象徴している。2026年現在も、その人気は衰えるどころか、お土産の枠を超えた日常のおやつとして定着している。
2026年の挑戦:地産地消と環境配慮へのシフト

今、和菓子業界が直面しているのは、原材料の高騰と環境負荷の低減という二大課題だ。やまだ屋はこの課題に対し、極めてローカルなアプローチで答えを出している。使用する小麦や小豆の調達ルートを見直し、広島県内および瀬戸内エリアの生産者との提携を強化したのだ。
さらに、パッケージのプラスチック削減にも踏み切った。個包装の利便性を損なわずに、環境に優しいバイオマス素材へと順次切り替えを進めている。老舗だからこそ、次の世代に美しい瀬戸内を残す責任がある――その強い意志が、一枚の包装紙からも伝わってくる。
インバウンドの多様化に応える「ボーダレスな和菓子」

宮島の参道を歩けば、多様な言語が飛び交う。世界中から観光客が集まる中、食の多様性(ダイバーシティ)への対応は急務だ。やまだ屋は、ヴィーガンやグルテンフリーに対応した新しいラインナップの開発を進め、大きな話題を呼んでいる。
伝統の製法を守りながらも、動物性原料を使用しない餡の開発や、米粉を使ったもみじ饅頭の試みは、海外からの旅行者にとって大きな福音となっている。「誰もが同じテーブルで、同じように美味しいねと笑い合えること」。そんなシンプルで温かい思想が、新たな和菓子の形を生み出している。
機械化の裏で息づく、職人たちの「手の記憶」
一日数万個を製造する現代の工場において、機械化は不可欠だ。しかし、やまだ屋の工場を覗くと、そこには必ず職人の鋭い眼光がある。気温や湿度によって微妙に変化する生地の水分量や、餡の練り加減は、決して数値化しきれない人間の感覚が頼りだ。
「機械は均一に作るための道具であり、味を決めるのは人間だ」と、現場の職人は語る。最新のテクノロジーを導入しつつも、最後のクオリティコントロールは熟練の職人が五感を研ぎ澄ませて行う。このハイブリッドなモノづくりこそが、ブレない美味しさを支える背骨なのだ。
宮島・表参道商店街で放つ、新たな体験型拠点の魅力
ただ買って帰るだけのお土産屋の時代は終わった。宮島の本店では、もみじ饅頭の手焼き体験が人気を博している。自分で生地を流し込み、焼き立てをその場で頬張る体験は、子供から大人まで、そして海外からの旅行者にとっても忘れられない旅の記憶となる。
2026年、店舗はさらに進化を遂げ、地域の歴史や文化を発信するコミュニティスペースとしての役割も兼ね備えるようになった。お茶を飲みながら宮島の歴史に触れ、職人の技を間近で見る。五感すべてを使って「広島」を感じられる場所が、ここにある。
100年企業へ向けて:変わり続けることこそが伝統
まもなく創業100周年を迎えるやまだ屋。その歩みは、決して平坦なものではなかった。戦後の混乱期、災害、そして近年のパンデミック。幾多の困難を乗り越えてこられたのは、「変えないために、変わり続ける」という柔軟な姿勢があったからに他ならない。
伝統とは、過去の遺物を守ることではない。時代に合わせて形を変え、人々の心に寄り添い続けることだ。広島のソウルフードを守り、育み、次の世代へと繋ぐ。やまだ屋の静かなる挑戦は、これからも私たちの五感を満たし、旅の思い出を彩り続けるだろう。 (出典: 広島 やまだ 屋(Yahoo!ニュース))